【イベントレポート】ドローンに特化したカンファレンス『Drone Tokyo 2019 Racing&Conference』に行ってきました

みなさん、こんにちは! 2019年11月1日(金)に東京ビッグサイトで開催されたドローンのカンファレンス『Drone Tokyo 2019 Racing&Conference』に行ってきたので、レポートを書いてみました。 政府から民間企業まで、ドローンの社会実装に向けて最前線で取り組むみなさんの生の声をお届けします。 ドローンに関心のある方、ドローンビジネスに携わっている方は、ぜひ流し読みしてみてくださいね!

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tokyo big sight

目次(登壇者一覧) * 今枝 宗一郎氏(衆議院議員) * 千葉 功太郎氏(ドローンファンド) * 長﨑 敏志氏(内閣官房 小型無人機等対策推進室 参事官 ) * 荻原 直彦氏(総務省移動通信課・課長) * 片野 大輔氏(株式会社A.L.I.Technologies 代表取締役社長) * 鷲谷 聡之氏(株式会社自律制御システム研究所 取締役 最高執行責任者 / COO) * 柴田 巧氏(株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク 代表取締役社長) * 前田 大輔氏(KDDI株式会社 経営戦略本部 次世代基盤整備室長) * 矢野 裕氏(名古屋鉄道株式会社 取締役 常務執行役員 経営戦略部長) * 河野 雅一氏(株式会社プロドローン 代表取締役社長) * 西沢 俊広氏(NEC PSネットワーク事業推進本部 マネージャー/ロボットエバンジェリスト) * 横山敦史氏(株式会社日立製作所 ディフェンスビジネスユニット ドローン事業開発センタ 部長代理)

衆議院議員 今枝宗一郎

カンファレンスの幕開けを熱意溢れるスピーチで飾った今枝氏。 衆議院議員として、ドローン推進に向けた日本政府の取り組みについてお話しいただきました。 ドローン推進議員連盟を中心に、日本政府はドローン推進のためのロードマップを作成し、技術開発や電波、規制整備など、あらゆる面からドローン導入に向けて準備を進めるとのこと。

日本政府がドローンの社会実装に意欲をもって取り組む理由は、「リアルな世界において、物流や農林水産、災害などで革命を起こせるから」と述べる今枝氏。 今から50年後には労働人口が4,000万人に半滅すると言われている中で、ドローンは日本における労働人口減少への処方箋。 だからこそ、日本政府は2022年までには都市部でのレベル4のドローン飛行、2023年には有人の空飛ぶクルマの実用化に向けて取り組んでいるとのこと。

日本の生産量が減少して日本経済の行方が危惧される中、行政から民間まで、日本では各プレイヤーが腹をくくってドローンの社会実装に尽力していて、Drone Tokyo 2019 Racing&Conferenceにおいて開催されているドローンレースには、最高に楽しい場をもたらすと同時に、ドローンの安全性やリスク管理での技術発展を助ける役割があると語る今枝氏。

今枝氏のような熱い想いをもった方を筆頭に、日本政府が他セクターも巻き込みながら、今後どのようなドローン・ムーブメントを起こしていくのか楽しみですね!

Drone Fund創業者 千葉功太郎氏 『モビリティの未来を切り開く』

当カンファレンスがハロウィンの翌日ということもあって、宇宙飛行士の格好で登場した千葉氏。 「まずはやってみよう」 の精神をもとに、自らドローンを飛ばし、航空パイロットの資格取得に向けても訓練中とのこと。

世界各地で開催されているドローンレースの意義について、千葉氏は下記2点を挙げます。  ①最先端テクノロジーの追求 → メーカー間の技術促進  ②レギュレーション進化 → 交通ルール/整備を通じた安全面の強化

現在は官民一体となってドローンの社会実験。 千葉氏は、Drone Tokyo 2019 Racing&Conferenceのようなドローンレースとカンファレンスを行なっていくことで、ドローン・エアモビリティの社会実験フェーズを脱して社会実装を加速させ、ドローンが当たり前の「ドローン前提社会」を創りたいと語ります。

課題先進国ニッポンにおいて、今こそドローン前提社会を築くチャンスと述べる千葉氏。 ドローンが当たり前に活躍する未来とは、一体どんな世界でしょうか? たとえば... * APIをたたくだけで誰でもドローンを自由自在に使える * BtoC、CtoCのドローンサービスが普及する * ドローンが1tの荷物を運べるようになる(ノルウェーの会社が開発中) * ドローンによる山岳レスキューが可能になる * ドローンのための航空管制が普及する * 日本の稲作をドローンが担うようになる(2025年までに日本の稲作の50%をドローンで実施することを目指している) * 個人移動のためのエアモビリティが登場する(XTURISMO、SkyDriveによる空陸両用ドローン等)(今年中に有人実験を予定)

このようにドローンが当たり前に活躍する社会は、空の産業革命を意味すると語る千葉氏。 日本政府は、今年の夏に行なわれた成長戦略閣議において、先進国で初めてエアモビリティの社会実装における日付と内容を公式の場で約束しました。 あらゆる分野において日本は他の先進国よりも遅れていると囁かれていますが、千葉氏の考えは前向きです。

「日本は決して遅れていない。クルマと同じように、空の産業革命も日本が牽引していけると信じている」

小型無人機対策推進室参事官 長﨑敏志氏(国土交通省から出向中、在日カナダ大使館)『ドローンで空の移動革命を』

2022年までにドローンを社会実装するという日本政府の宣言を実現するために任命された長﨑氏。 長﨑氏は、今年からドローンの自動運転レベル4の実験に着手するとのこと。 そんな長﨑氏から、ドローンに対する日本政府のこれまでとこれからの取り組みについてお話しいただきました。

日本政府がドローンに注目し始めたきっかけは、平成27年4月に発生した首相官邸屋上へのドローン落下事案とのこと。 即座に緊急会議が開かれ、航空法の改正およびドローンの飛行に関する基本的ルール設定が実施されました。 政府は小型無人機等飛行禁止法(議員立法)を制定し、国の重要施設等の上空での警察官による措置を規定。 日本におけるドローンの歴史は、落下事故を起点とした法規制から始まりました。

しかし、日本政府は2019年7月にドローン案の体制を見直し、レベル4の小型無人機の社会実装に向けて取り組むことを決定。 去年からレベル3(目視外で自律ドローン飛行)の実験を開始しました。 福島県猿島楽天西友)を始め、日本各地でドローンの物流実験を実施。

そんな中、長﨑氏は、今年からレベル4に取り組むにあたって意気込みを述べます。 ドローンが当たり前に活躍する社会を作るためには、チャレンジしないといけない。 でも、失敗したときに「だからダメなんだ」と責められる。 そんなジレンマの中でも取り組んでいかなくてはいけない。

やみくもにチャレンジするのではなく、ドローンの利活用拡大に向けて、あらゆる面から環境整備を行なう必要がある、と述べる長﨑氏。 機体の安全性担保だけでなく、操縦者のリスク管理。 ドローン同士、ドローンと他の飛行物体がぶつからないためのUTM(航空管制)。 地上にいる人からの理解・信頼も得るためには、制度をきちんと整備していく必要がある。 制度を整備していく上では、なんでもかんでも規制するのではなく、いかにバランスよく整備していくかが必要となる、と力強く述べました。

総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課・課長 荻原直彦氏 『空の産業革命に向けた総務省の取り組み』 

総務省と聞いてドローンを思い浮かべることはあまりないかもしれませんが、総務省もドローンの普及においては重要な役割を担っています。 萩原氏より、総務省とドローンの知られざる関係性についてお話しいただきました。

電波、地方自治、統計、行政管理など、さまざまな局から成り立つ総務省。 中でも電波部では、陸上で使うシステムの電波監理が主な仕事です。 そんな電波部にとって、注目すべきは5G。

5Gが展開されることによって、私たちの生活の中にはさまざまなIoT(通信システム)が浸透していきます。 ドローンもその1つ。 5Gによって、インターネットにつながったドローンのさらなる利活用が期待されています。

2020年春から5Gが順次展開される中で、総務省はどんな役割を担っているのでしょうか?

まず、ドローンはさまざまなシーンで電波を利用します。 たとえば... * ドローンを制御するための電波 * 映像を含めたドローンデータの地上配信 * 映像を送る電波、制御を送る指示信号を送るための電波

電波部では、多くの人が同時かつ自由に電波を使おうとすると電波障害が発生してしまうため、電波利用のルールを設けて、電波の交通整理をしています。 ドローンが社会実装されるにあたって、ドローンは携帯電話の通信システムを使用する想定とのことですが、ドローンによる携帯電話通信システムの利用には、さまざまな課題があると語る萩原氏。

携帯電話の通信は、99.99%のエリアをカバーしています。 そしてこの携帯電話のインフラをうまく活用しようとしているドローン。 イメージとしては、スマートフォンをドローンに搭載するイメージ。 ただ、そのような使い方をすると、携帯電話のネットワークに影響を与えてしまうことが実験により判明しているとのこと。 地上では木などが携帯電話の通信をブロックしますが、空には通信をブロックする物質的な障害がないため、空でドローンが携帯の通信を使うと、地上での通信に支障をきたしてしまうようです。

そこで、ドローンの機体自身で通信の利用を制御できるようにするための技術が開発され、国際標準にもなりました。 2020年には誰でもネットにアクセスしてカンタンに通信の利用をコントロールできるシステムを構築したいと考えているとのことです。

5Gは、AI/IoT時代のICT基盤だと語る萩原氏。 5Gの特徴としては、下記3点が挙げられます。  ①高速・大容量  ②低遅延  ③多接続

このような特徴から、ドローンと5Gがコラボすることでさまざまなユースケースが可能となります。 たとえば... 農業においては、ドローンが撮影した4K映像をスマホ等に送ることで、稲作状況をより細かくチェックできるようになる 人の捜索や山岳登山者の見守り、災害時において、より素早く的確に人を特定できるようになる

Society5.0時代におけるICTインフラを活用した地域課題解決において、ツールとしてのドローン利用に期待していると語る萩原氏。 課題先進国ニッポンにおいては、ドローンをいかに使うかがカギですね!

慶応義塾大学SFC研究所 ドローン社会共創コンソーシアム 副代表 南政樹

ドローンに対する政府の見解に続き、南氏よりアカデミックの立場からみたドローンのこれまでと今後についてお話しいただきました。

過去数十年間の時代の流れをおさらいすると... * ある目的に対して高速に計算できるコンピューターが主流になる→ * ソフトウェアが普及する→ * インターネットが広まる→ * IoT/ロボット/ドローン/ファブリケーションの時代が到来する

ここでポイントとなるのが、インターネットはあくまでもサイバースペースで完結していましたが、IoT/ロボット/ドローンはインターネットをもとに実世界で活用されるtangible(=実体的)なものと語る南氏。 サイバー空間ではなく、現実のリアルな空間において活用されるものだからこそ、ドローン前提社会を創る上では、ドローンの存在が「当たり前」に受け入れられる社会を創ることが肝心だと南氏は語ります。

ドローンのリスクと利便性に対するコンセンサスを築いて社会受容性を醸成することで、個人/商業/公共利用のいずれにおいてもドローンが課題解決の選択肢となるドローン前提社会を実現していく姿勢が重要だということを改めて認識しました。

株式会社自律制御システム研究所(ACSL) 鷲谷聡之氏

政府と研究機関がドローン前提社会に向けた戦略を制定していく中で、実際にドローンの社会実装に向けて民間企業はどのような取り組みを行なっているのか? 2018年12月21日、東証マザーズ市場に上場したACSLの鷲谷氏より、民間企業として取り組んでいるプロジェクトについてお話しいただきました。

「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」

ACSLは、従来の3K(きつい・汚い・危険)と言われている仕事から人々を開放して、もっと人間らしい仕事をできるようになる世界を目指していると語る鷲谷氏。

ドローンを活用しているインダストリアル向けに、ドローン+クラウド+AI+UIが一体となった、無人化・IoTプラットフォームの構築を目指しているとのこと。 そんなACSLが取り組んでいるプロジェクト事例は下記の通り。 * プラントでの腐食点検無人化に向けて、点検アプリケーションを開発 * 福岡県から玄海島からの5km配送試験(航空管制のプロであるANAと共同実施)

千葉大学発のスタートアップとして始まり、東証マザーズ市場に上場したACSLの今後に、今後益々注目です!

A.L.I. Technologies 片野大輔氏

時間がおしているとのことで駆け足で講演するという配慮を見せた片野氏。 設立わずか数年で60名以上の社員(うち外国人15名、エンジニア30名)が活躍するA.L.I. Technologiesでは、ドローン、AI解析、操縦士提供など、多岐にわたって事業を展開しています。 東京モーターショー2019では、エアモビリティの展示とドローンレースにおける管制システムCOSMOSを提供しているとのことなので、モーターショーに行かれる方も行かれない方も、ぜひチェックしてみてください!

パネルディスカッション『ドローン業界の課題』

登壇者 A.L.I. Technologies 片野大輔氏 Drone Fund創業者 千葉功太郎氏 株式会社自律制御システム研究所(ACSL) 鷲谷聡之氏 慶応義塾大学SFC研究所 ドローン社会共創コンソーシアム 副代表 南政樹

ドローン業界の動向に関するパネルディスカッションの中から、注目すべきポイントをピックアップしてみました▼

  • ハードウェア系のスタートアップはお金を集めるのが大変だが、ドローン産業が盛り上がったことによって、ACSLの売上が3年間で10倍伸びた。
  • ドローンを飛ばすことが目的ではなく、AIなどの技術を取り入れながら、いかにドローンを各業界で役立てていけるかが大切。
  • 過去数年間で、ドローンを通じて何ができて何ができないのかを切り分けて考えられるようになったと思う。
  • 内閣府が2022年にレベル4認可に向けて取り組むと宣言した。1番のネックである規制の部分がクリアできるのであれば、あとは技術発展すればいいだけ。今がチャンスである。
  • 内閣府がドローン導入に対して意欲的なことで、規制の問題解決のハードルが下がったことは確かだが、大切なのはどのように規制・法整備を進めていくかである。

株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク 代表取締役社長 柴田巧氏(シリコンバレー経験あり)『橋が風景になる、日本』

日本にある橋の数はいくつ? というクイズから始まった勢い溢れる柴田氏の講演。 なんと... * アメリカ:約60万橋 * 中国:約80万橋 * 日本:約70万橋

日本よりも国土面積が圧倒的に広いアメリカや中国と肩を並べるほどの数の橋が存在する日本。 このように、日本には2千兆円を超えるインフラがあるものの、これらのインフラの老朽化が課題となっていると熱弁する柴田氏。

ビル・インフラの設備コストは膨大。 そこでドローンを活用した効率化が見込める、インフラの設備点検。 ドローンによるインフラ点検のメリットは何か? まず、点検現場までの移動時間をなくし、快適な部屋であたかも現場にいるかのように点検できたらいいよね! というのが現場で働く点検員の願い。

ドローンを点検に活用すれば... * ドローンを使って空撮することで、膨大な3D写真があっという間に手に入る * ドローンから直接自動でデータをクラウドに送信することで、点検内容をえんぴつで書いてExcelに転記する手間が減る * 通常では1回の点検につき最低でも40万~50万はかかるが、ドローン導入によってコストを約10万円代に抑えることができる(品質向上、コスト/時間/リスク削減)

このように、点検業務におけるドローンの導入によるメリットはわかりきっているものの、実際にドローンを導入しようとすると、既存のオペレーションを転換する上でいろいろな手続きが必要となる、と語る柴田氏。 数百ページにおよぶマニュアルの書き換えに行政手続き... そこで、柴田氏が設立したJIWの強みは、ドローン導入にあたって発生する煩雑な業務を完結化し、Operational excellenceをドローン業界へもたらす点にあるとのこと。

国内の点検市場は下記の通り膨大。 点検市場規模:総額360億円 修繕市場規模:総額9,500億円

JIWは世界No.1ドローン電力点検事業者Aerodyneと協働し、すでに27都道府県で実績があるとのこと。 柴田氏は、点検業界のプレイヤー(通信/高速道路/電力/ガス)が競い合いをやめてみんなで協力してドローンによる点検データを共有するようになれば、全体として大幅な点検コストを削減できると語ります。 そして余ったお金を使って競争優位性確立のための投資へ回せると続ける柴田氏。

今後はインフラ点検のイノベーション(障害物回避技術)を輸送・物流などの他領域にもスケールしたいと語るJIWに、今後も注目です!

KDDI株式会社 経営戦略本部 次世代基盤設備室 グループリーダー 博野雅文氏 『スマートドローンで実現する世界 ~ドローンの社会実装を前進させる5Gとドローンプラットフォームの構築~』

ドローンはすでにさまざまな業界を取り巻くビジネスへと成長しつつあります。 そこで、国内大手通信会社であるKDDIより、通信会社によるドローンへの取り組みについてお話しいただきました。

モバイル通信事業者の強みとして、モバイル通信・5Gを通じてドローンに参入しているKDDI。 2019年は5G元年とも言われており、下記のような特徴をもつ5Gがさまざまな領域で活躍することが期待されています。 5Gの特徴(再掲)  ①高速・大容量  ②低遅延  ③多接続

5Gの展開にあたっては、5G用の基地局を新たに設立する必要があるとのことで、KDDIは2021年までに1万局、2023年までに5万局の展開を目指しているそうです。

目指すは「au unlimited world」。 スマホだけでなく、あらゆるものに通信が溶け込んでいく世界。 5Gとドローンのコラボによって、特に下記の領域で社会実装が加速していくと考えていると語る博野氏。 * 工場 * 自動運転車 * 遠隔操作 * ドローン * 遠隔監視

KDDIが提唱するのは、ネットワークにつながり、自ら考え、人を助けるスマートドローンを提唱。 KDDIは、モバイル通信に対応したスマートドローンのソリューションに必要な機能をプラットフォームとして提供しています。 KDDIのスマートドローンプラットフォームは、通信/機体/気象・地図/運航管理に対応しているとのこと。 NEDO警備運航管理システム(AIで不審者を特定できるシステム)をSECOMと協働で実施している他、日立、NECNEDOと協働でプロジェクトを進めているとのことです。

5Gとドローンがある世界。これからますます注目です!

名古屋鉄道株式会社 取締役常務執行役員 経営戦略部長 矢野裕氏『名古屋鉄道 x ドローン前提社会』

鉄道会社といえば陸のイメージですが、矢野氏より、鉄道会社と空(ドローン)の意外な関係性についてお話しいただきました。

名古屋鉄道は数十年も前から空の業界に携わってきたと語る矢野氏。 ANAの前身である日本ヘリコプターに出資してきた実績があり、ANA社外取締役名古屋鉄道が担当しているとのこと。 なんと、名古屋鉄道は国内最大規模のドクターヘリ運用企業でもあるそうです。

現在の「ドローン前提社会」は戦後の「民間航空機前提社会」と似ていると述べる矢野氏。 当時は新幹線不要説があった(新幹線を作るぐらいなら民間航空機の開発に使った方がいいと言われていた)。 でも、今となっては新幹線がない世界は想像できない。

ドローンも同じで、現時点で市場が確立しているのは空撮、農薬散布、測量(農業に関しては農薬散布からセンシング農業へ)だが、今後ドローンの普及が進むにつれて、ますます多領域でドローンが当たり前に浸透していくと考える矢野氏。 たとえば... ドローンによる現サービスの代替 * ヘリコプターなどの有人機がドローンに替わる * ドローンが物流を担うようになる * タクシーがドローンに替わる

ドローン周辺ビジネスの発展 * コインパーク(名古屋鉄道は、東海地方を中心にコインパークを展開)→ドローンのポート場 * 車体整備→機体整備(車両の登録、車検、車検の管理、etc) * 自動車学校→操縦士養成

ドローン前提社会におけるインフラ整備の動向 * 福島ロボットテストフィールドにおける実証実験 * Trajectory社制管制システム

近年よく耳にするMaaSという言葉。 矢野氏によると、MaaSで提唱されているようなことをこれまでも名古屋鉄道は行なってきたため、名古屋鉄道にとってMaaSは決して新しい言葉ではないとのこと。 ただ、MaaSという新しい言葉によって、移動においてもデジタルトランスフォーメーションが求められるようになり、名古屋鉄道にとっても人の移動を再定義しなくてはいけないと考えている、と述べる矢野氏。

名鉄グループは、下記のような事業を通じてドローンの社会実装に向けて取り組みを始めています。 * 名鉄ドローンアカデミーの運営 * UAVレーザーサービス * ベンチャー企業との協業(アカデミーの開業支援をしてくれたA.L.I. Technologies、名古屋の機体メーカーであるPRODRONEとの物流関連PoC) * NEDOドローン同時接続試験への参画 * 愛知県無人飛行ロボット実証実験受託、離島への医薬品の輸送に成功(3.5km)

空の産業革命と呼ばれるドローンですが、空だけでなく、陸、海、空に携わるプレイヤーが一体となって次世代のモビリティ社会のあり方を考えていくことが重要になりそうです。

株式会社プロドローン 代表取締役社長 河野雅一氏 『ドローンによる長距離配送で見えてくるもの』(オーストラリアで無線機の修理)

最近はしばらく表舞台に出ていなかったと語る河野氏。 ロボットアームの開発で一躍世界で有名となったプロドローンの最近の動向について、河野氏よりお話しいただきました。

プロドローンが行なっているのは、主に他社で開発不可能であった案件を中心とした受託開発。 難易度の高い開発を手がけるグローバルハードウェアベンチャーとして、産業用ドローンの特許・安全性担保は必須と語る河野氏

河野氏は、本カンファレンスにおいて伝えたいポイントとして、以下の3つを挙げました。 * ドローン配送について、本当は長距離配送が1番適している * ドローンによる300km配送は実現可能 * 近い将来、ドローンによるまったく新しい無人配送のプラットフォームが生まれる

現在はドローンによる短距離配送の実証実験が主流。 そして荷物をドローンに載せる作業も人が行なっているが、近い将来、ドローンが長距離配送を自己完結で遂行できると信じていると語る河野氏。 プロドローンは、30kgの重さの荷物をドローンで配送することに、すでに可能しているとのこと。

ドローンの配送スタイルは主に3つ。  ①ラストワンマイル型(個別宅配)  ②長距離配送型(多地点・拠点間配送)...10~500kgの荷物を50~200km先へ  ③大型/トラック代替型(RPA・OPA)...500kg~1tの荷物を500km以上先へ

上記3つのうち、直近でプロドローンが実現したいことは、2拠点間ではなく、『多地点間』における『中長距離(200km~)』配送とのこと。 そこで大きなボトルネックとなるのがバッテリー(たとえば現状のバッテリーでは1回飛ばすのに8時間充電が必要)。 ドローンの長距離飛行を実現するために、ガソリンヘリコプターを検討しているとのこと。

プロドローンでは現在エンジンマルチコプター(エンジン1つのマルチコプター、風に強いピッチコントロールつき)を開発しているが、エンジニアが忙しくてなかなか商用化されていないと語る河野氏。 プロドローンの提携先であるカナダのAVIDRONEは、1時間以上の距離を飛べるドローンを、来年から販売開始予定とのこと。

直近で予定している実証実験では、10kgの荷物を175km先の目的地に届ける予定と語る河野氏。 長距離飛行のデータを取得した会社はまだ存在していないため、KDDIのスマートドローンプラットフォームを活用して、長期間にわたって実証実験データを収集予定とのこと。

現在はPROFLYERを開発しているほか、全国にドローンのフライトセンターを数拠点作りたいと今後の展望を語る河野氏。 ドローンの自己完結型の配送システムに向けたプロドローンの取り組みに、今後も注目です!

NEC PSネットワーク事業推進本部 マネージャー/ロボットエバンジェリスト 西沢俊広氏 『空の道を作り、未来の空を守る!NECのドローン運航管理システムの取り組み』

NECは、1962年から航空業界のインフラ基盤支援をしてきたと語る西沢氏。 宇宙産業でもビジネスを展開しているとのこと(衛星のタッチダウンの際に使うレーダーの開発)。 そんなNECとドローンの関わりについて、西沢氏よりお話しいただきました。

ドローン運航管理システムについて  空の産業革命に向けたロードマップ2019において、運航管理システムの確立が記載されています。 そこでNECは、飛行情報共有システムを開発しているとのこと。 NEDOのDRESS-PJにおいて、NECNTTデータ、日立が共同で下記機能を搭載した運航管理システムを行なっています。  ①運航管理統合機能   多業者間で情報共有    空域情報    飛行状況  ②運航管理機能  ③情報提供機能(地図・気象情報など)   1.飛行計画(いつ・どこで・何台飛ぶ予定なのか)   2.空域情報(飛ばしていい場所はどこか)   3.飛行情報(今・どの機体が・どこを飛んでいるのか)

福島ロボットテストフィールドでは、NECの運航管理システムを用いて、他社と共同で1時間に100機体を同時飛行することに成功。 APIも公開しており、今後はドローンの社会実装に向けたセキュリティの対策(なりすまし防止)にも着目していくと語る河野氏

ドローンの社会実装に向けて、着々と社会実験が進められていますね!

株式会社日立製作所 ディフェンスビジネスユニット ドローン事業開発センタ部長代理 横山敦史氏 『来たるべきドローン社会実装に向けた産官学連携と日立ドローンプラットフォームのご紹介』

最後の講演を飾ったのは日立製作所の横山氏。 Inspire the Nextのスローガンが印象的な日立ですが、もとのスローガンは残しつつも、新たに打ち出したコンセプトが「POWERING GOOD」とのこと。ドローンが日本の課題解決に寄与する社会に向けてPOWERING GOODしていきたいと語る横山氏。

日立は社会インフラビジネスを展開しており、主な軸はエネルギー、産業、モビリティ(新幹線、世界最速エレベーターなど)、ライフの4つとのこと。 日立が提供している価値(LUMADA)は、OT x IT x Product(ex.drone)を通じたQOLの改善とのことで、日立はルール x 技術の両面でドローン前提社会に貢献していきたいと語る横山氏。 各プレイヤーがドローンを飛ばそうとしている中、ドローン前提社会において1番大切なのは業務の改善と経営課題の解決とのこと。日立が目指すのは、ドローンの活用→業務改善→経営課題の解決と横山氏は述べます。

このように、産学官民が一体となって目指すはドローンの社会実装によるQOLの向上と課題解決。 ドローンの社会実装に向けては技術発展や法整備、理解の促進など、クリアすべき課題がたくさんありますが、肝心なのはただ社会実装するのではなく、いかに社会実装するのか。そして実装後も、ドローンの活用による利便性と安全性を担保していこうというコミット力。

Drone Tokyo 2019 Racing&Conferenceの講演を聞いた中で、繰り返し出てきたポイントは、以下の3つ。 * これからは、ドローンの社会実験から社会実装へ * 各プレイヤーがバラバラに取り組むのではなく、産学官民が一体となったアプローチへ * 2022年までにドローンを社会実装すべく、レベル3からレベル4へ(自動運転 x 都市部のドローン飛行)

Drone Tokyo 2019 Racing&Conferenceについて詳しく知りたい方はこちら:https://dtrc2019conference.peatix.com/

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