航空宇宙工学の若きエース、宮谷聡氏が語るドローンと宇宙ビジネス(Airobotics社)

PSYGIGが送るエンジニアインタビュー特集の記念すべき1人目は、航空宇宙工学界の若きエースである宮谷聡さん(29歳)。

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宮谷聡さんってどんな人?

星空が綺麗な宮崎の田舎で育つ中で、自然と宇宙に想いを馳せるようになったと語る宮谷聡さん。東京大学を卒業後、アメリカ、フランス、およびイスラエルを拠点に、衛星および航空機の開発に携わってきた聡さん。現在は自律飛行型ドローンに特化したイスラエル初のスタートアップ「Airobotics」で働いています。宮崎から世界へ飛び出して活躍してきた聡さんが目指すは宇宙。航空宇宙工学分野において活躍する日本のエースである聡さんに、1時間半に渡る本気のインタビューにお付き合いいただきました。ドローン業界で働く決意をした理由や今後目指すドローン業界、宇宙におけるドローン活用などなど、ドローンおよび航空宇宙工学に関心のある方々にぜひ読んでいただきたい内容が溢れる聡さんの人生ストーリーをお届けします。

  • 東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻(2013-2015)
  • ISAE Supaero | Flight Test Engineering専攻(2015-2016)
  • JAXA(宇宙航空研究開発機構) | Research Assistant(2013-2015)
  • Airbus | Simulator Engineer(2016)
  • 三菱商事 | Aircraft Finance Analyst(2017)
  • 本郷飛行機(hongo-aerospace inc)| Project Manager(2017-2018)
  • Airware | Sales Engineer(2018)
  • Airobotics | Sales Engineer(2018-)

世界経済フォーラムのTechnology Pioneers of 2019に選出された「Airobotics」での今

Airoboticsではどんなお仕事をされていますか?

日本法人は僕1人なので、セールス、マーケティング、資金調達、レギュレーション、すべて1人で行なっています。

Airoboticsならではの強みは?ご自身が誇りに思うAiroboticsのすごいところは?

3つあります。1つ目はパイロットがいらない自律飛行型ドローン、2つ目はあらゆるハードに対応したデータ解析(Airoboticsのハードを使わなくてもOK)、3つ目はレギュレーション(法規制)への対応です。

法規制が厳しい国へのエントリーはどのように行なっているのですか?

そもそも法規制が厳しい国へはエントリーしていません。いくら素晴らしい技術があっても法規制にマッチしていないと意味がないと思っています。日本法人は〇〇年に立ち上がったばかりですが、労働人口不足を始め、課題先進国と言われている日本において、ドローン活用の可能性は無限大にあると思っています。特に今後は東京オリンピックラグビーワールドカップ大阪万博が開催予定で、日本が世界から注目される年なので、日本は市場として魅力的だと思っています。

東京オリンピックに向けて、Airoboticsとして何かやりたいことはありますか?

ドローンによる監視をやりたい。都市部における目視外飛行については、うまくいけば2022年から施行されるため、オリンピックには間に合わないかもしれませんが、大阪万博までにはドローンによる監視を実現したいです。

Airoboticsで働く中で魅力だと思う点は?航空宇宙工学の面白いところは?

イスラエル x シリコンバレーの文化が融合しているところです。イスラエルは紛争地帯で安定した就職先が少ないため、起業する人が多いんです。Airoboticsの魅力はスタートアップ文化とスピード感にあります。

イスラエルのスピード感が早い理由は何だと思いますか?

Airoboticsの創業者も5年に1回のペースで会社を立ち上げてきたんですよね。ダメだと思ったら見切りが早い。基本的には創業5年以内にExitを目指しています。Airoboticsも、立ち上げから5年で120億円の資金調達に成功しています。

聡さんはエンジニアとしてBDに携わっていますが、どのように学ばれたのですか?

やりながら学んでいます。BDからエンジニアにいくより、エンジニアからBDにいく方が簡単だと思います。テック系企業においてはビジネス側とエンジニア側の対立が起こりがちです。エンジニアの経験がないセールスができないこともできると言ってしまうためです。しかし、エンジニアの背景があれば、うわべだけのセールストークをすることなく、地に足の着いた会話ができるため、クライアントからも信頼されやすいです。

Airoboticsで働く中でチャレンジングだと思う点は?航空宇宙工学の難しいところは?

カルチャーギャップを埋める必要がある点と、1人ですべての業務をこなす必要がある点ですね。今日本法人には僕1人しかいないので、セールス、マーケティング、資金調達、レギュレーションをすべて1人でやっています。絶賛採用募集中です!笑

もはや成長しかない環境ですね。チャレンジ精神溢れる学生・社会人にとってはすごい魅力的な職場ですよね!

仕事のモチベーションは何ですか?

世界にインパクトを与えたい。あと自分で起業したい。これがモチベーションです。今までいろいろ経験してきた中で、CEOとして起業する自信がついたんです。大企業で働いた3年とスタートアップで働いた3年を比べると、圧倒的に後者の方が成長したと実感しています。スタートアップ出身の人はすごくメンタルが強いですね。スタートアップで働いたことで、僕も今では自分で起業しても成功できるという自信があります。

仕事をする上で大切にしている心得・マインドセットは?

プレッシャーを楽しむこと。僕が好きな言葉に、pressure makes diamondsという言葉あります。プレッシャーがダイアモンドを作るということ。失敗しても死ぬわけじゃなから、失敗しても怖くない。失敗したとしてもLessons learnedだと思えばいいぐらいの心持ちでいます。

さとしさんの言葉を聞いて、最近本屋さんで流行っている「死ぬこと以外かすり傷」という本を思い出しました。

幼少時代から宇宙に想いを馳せ、大学で航空宇宙工学を学び始めた宮谷聡さんの学生時代とは?

航空宇宙工学を勉強しようと思ったきっかけは?

宇宙飛行士になりたかったから。今でもチャンスがあれば宇宙飛行士になりたいと思っています。故郷である宮崎の田舎は星がすごく綺麗で、幼いころから星空鑑賞が好きでした。

今でも宇宙飛行士を目指されているんですね!毎年募集していないのですか?

今では募集を停止しています。国際宇宙ステーションも数年以内に停止すると言われているので、もし募集があれば即応募します。

航空宇宙工学をどのように学びましたか?

大学で学びました。航空宇宙工学を学び始めたのは大学からです。

フランスの航空都市「トゥールーズ」に留学された理由は?

東京大学在学中に、Airbus主催のFly Your Ideasというコンテストに応募して、最終決戦の5チームまで選ばれたことがきっかけです。フランスのAirbus本社でインターンシップをする特権をもらい、そのままAirbusに就職しました。当時の日本にはBoeing社の航空機しかなく、Airbusで働く日本人は1人もいませんでした。僕はAirbusの航空機が日本にも進出するだろうと考え、Airbus唯一の日本人として働いてみたいと思ったのです。Airoboticsでも全社員200人中日本人はたった1人ですし、オンリーワンジャパニーズという立場にわくわくします。

まだ誰もやり遂げたことのないことをやってやろうという気質をお持ちなんですね。その気質は兄弟構成か何かから来るのでしょうか。

うーん、生まれ育った環境からでしょうか。宮崎の田舎で育ち、もともとは両親の歯科医院を継ぐ予定でした。ただ、幼少期から宮崎の綺麗な星空を見て育つうちに、自然と宇宙に想いを馳せるようになって。未知の世界に飛び込むことにすごくわくわくするので、宮崎から世界へ、世界から宇宙へ、という風に常に目指す舞台は世界でした。そうやって宇宙に想いを馳せるうちに、いつか社会に大きなインパクトを残す仕事がしたいと思うようになりました。

Airbus主催の「Fly Your Ideas」コンテストや東京大学JAXAの共同プロジェクト「CubeSat」、誰でも宇宙にチャレンジできる人工衛星開発キット「ARTSAT KIT」など、さまざまなご活躍をされていますが、Birdportのアイディアはどのように思いつかれたのですか。

航空会社にヒアリングしまくりました。ヒアリングの結果、航空会社が困っている課題の中でも航空会社自身が解決できない問題が2つあると分かったんです。1つ目はバードストライク、2つ目はサンダーストライク。ヒアリングした結果、チームメンバーの間でドローンを使ってバードストライク問題を解決できないかとの考えに至りました。その結果生まれたのがBirdportです。

Birdportは現在何かしらの形で活用されているのでしょうか?

ドローンを使った滑走路、音を出して鳥を追い払うなど、ドローンを使ってバードストライク問題を解決するより具体的な方法が見えてきました。当時コンテストに出したBirdportのアイディアを今振り返ると、ツメが甘い部分がたくさんあります。ただ、経験を積んできた今だからこそ、Birdportのアイディアを実用化できる兆しが見えています。

学生時代の夢が今になって実現できる可能性があるということですね。Airoboticsで学生時代の夢を実現するチャンスがあるというのは夢がありますね!

世界を舞台にキャリア経験を積んできた宮谷聡さんが語る航空宇宙工学 x ビジネスとは

航空宇宙工学の面白いところは?

航空宇宙工学の可能性は無限大です。

航空宇宙工学の難しいところは?

ビジネスとしてやるのが難しいところです。投資回収が難しいからです。お金があり余っている大企業もしくは起業家なら宇宙ビジネスに参入できますが...

確かに、イーロンマスク氏や堀江貴文氏など、今をときめく起業家は宇宙を目指しているイメージがあります。やはり即時に収益化できないと難しいのですね。

国内外で多様な経歴をおもちですが、キャリアチェンジを重ねてきた背景は?

目の前に面白いOpportunityが転がっているときです。あとは会社が潰れたとき(笑)。

今までご自身がやってきたことの中で誇りに思っているものは?

優秀な人と対等に働けることです。大企業では会社のネームバリューで案件を取ることができても、スタートアップではそうはいかない。だからこそ、スタートアップでは個の力が試されるんですよね。お客さんも、Airoboticsの宮谷さんではなく、宮谷さんがいるAiroboticsという風に認識してくれている。裁量が大きい分、自分の名前で生きていく力がつくところがスタートアップの魅力ですよね。優秀な人と対等に働けていることが誇りです。

さとしさんご自身がこれまで開発した「モノ」が答えとして返ってくるかと思いきや、「ヒト」に着目されている部分に、人との関わりを大切にされているさとしさんの人間性を感じました。

はは(笑)。僕は人とコミュニケーションを取ることが好きで、人からも「社交的な理系」とよく言われます。好奇心が強いので、人との会話を通じて新しい世界を知ることが好きなんです。

今までの失敗談は?どのように乗り越えましたか?どんな学びがありましたか?

今まで一番つらかった時期は、前職の会社がシャットダウンしたときですね。1,000人の社員がクビになりました。奥さんに電話したら「What!?」と言われましたね...(笑)

あ、奥さんはアメリカ人なんですか?

いえ、日本人です(笑) よく「奥さんは外国人なの?」と言われますが。

「What!?」と英語だったのでてっきり外国人の奥さんなのかと思いました(笑)。

航空宇宙工学のエンジニアになることの魅力は?

僕はとにかく空を飛んでいるものが好きなので、空を飛ぶものが作れるだけでも魅力です。あと宇宙ビジネスは今後ますます盛り上がっていくと思うので、航空宇宙工学のエンジニアとして面白い未来が待っていると思います。

ドローン業界を選んだ理由は?

空飛ぶものの中でもドローンのサイクルが圧倒的に早いからです。スピード感がいい。

ドローンは宇宙で活用できると思いますか?

はい。NASA土星探査で「Dragonfly」という名のドローンを飛ばすプロジェクトを始動したように、ドローンが宇宙で活躍できる可能性はたくさんあると思います。地球よりもドローンを飛ばしやすい環境とも言われています。

航空宇宙工学一途でキャリアを積んできた宮谷聡さんが語る今後のドローン業界と宇宙ビジネス

World Economic ForumのTechnology Pioneersについて、2019年度数百件もの応募企業の中から56の企業が選ばれたとのこと、おめでとうございます。選定基準について、World Economic ForumのFulvia Montresor氏は次のように述べています(Companies were selected for their potential to “transform their industries” and “improve society for years to come,” Fulvia Montresor of the World Economic Forum said)。automated dronesの分野で受賞されたとのことで、Airoboticsが目指すドローン業界の将来の姿と、どのようにドローンを通じて社会に貢献していきたいと考えていますか?

ドローンが当たり前に使われる時代を創りたいです。大企業だけではなく中小企業・一般市民もドローンを活用する世界を目指しています。特にスマートシティ(都市部)でのドローン活用を推進していきたいですね。現状だと人口が少ない地域でドローンが使われていますが、人口密集地帯である都市部でもドローンが安全に活用されて社会にインパクトをもたらす世界を創りたいです。

ドローンの社会的インパクトが注目される一方で、ドローンが落ちるのではないかと懸念し、ドローンが頭上を飛び回ることに抵抗がある人もあります。さとしさんとしてはどのようにお考えですか?

ドローンの安全性を担保することが重要だと考えています。Airoboticsとしては、ドローンの故障率を通常の飛行機の故障率と同じレベルにまで引き上げたいと考えています。ドローンが怖いという気持ちは、ドローンが日常生活において役に立っている実感がないからだと思うんです。だからドローンの安全性を担保した上で、ドローンが社会の役に立つ存在になってほしいですね。

Technology Pioneersに選ばれると2年間World Economic Forumのイニシアチブとして活動するとのことですが、今後2年間どんな役割を果たしたいですか?

空飛ぶGoogleになりたい!

ご自身の将来のビジョンは?

宇宙に行きたいです!今まで宮崎の田舎から世界を目指してきました。宮崎からフランス、アメリカ、イスラエル、地球、そして最終的には宇宙を目指しています。宇宙を目指すにあたっては、2つの選択肢を考えています。 * 宇宙飛行士になって宇宙に行く * イーロンマスクのように航空宇宙の分野で起業して宇宙に行く 宇宙飛行士の募集はしばらくの間停止しているので、今は起業を考えています。もちろん宇宙飛行士の募集が再開すれば今すぐ応募します。

宮谷聡さんの素顔に迫る!

尊敬しているエンジニアは?

大学時代の同期です。

身近なご友人を尊敬しているところが、聡さんらしくて素敵ですね。

衛星ビジネスを立ち上げた大学時代の先輩を始め、僕の周りには優秀な人がたくさんいるので、本当にみんなすごいと思っています。身近な人の中で尊敬している人はたくさんいます。

今注目しているエンジニアは?

たくさんいます。PSYGIGのGaryももちろんその1人。Inspired.Labに入居している会社のエンジニアもみんな大変優秀です。Deep Learningの神様と言われているAdam GibsonもここInspired.Labで働いています。この本(Deep Learningの本)を書いた人で、サインももらいました!笑

おおお、すごいですね!ぜひ一緒にコラボしていきたいです!

もちろん!

好きな言葉・座右の銘は?

pressure makes diamonds

もし生まれ変わるとしたら、どんな仕事をしたいですか?

それはもちろん、生まれ変わってもこの仕事がしたいです!

その言葉を聞きたくてあえてこの質問をしました!笑

最後に、航空宇宙工学のエンジニアになりたい学生に向けてメッセージをお願いします。

これからの時代は、ますます航空宇宙の分野が盛り上がっていきます。ベンチャーでも参入できるぐらい、航空宇宙ビジネスの障壁下がっています。だからこそ、あえてビジネス視点を学ぶことが大切だと考えています。

留学やおすすめの本など、ビジネスを学ぶ上でのアドバイスはありますか?

スタートアップで働くことですね。もしくは自分で起業してしまうこと。僕が学生時代に戻れるなら、きっと学生起業をすると思います。

大人になっても幼少時代からの夢を忘れず宇宙を目指し続ける宮谷聡さん。周りから社交的な理系と呼ばれているだけあって、熱意とフレンドリーさが見事に融合した素敵な方でした。聡さんはPSYGIGのGaryとも仲がいいので、AiroboticsとPSYGIGのコラボに期待です!聡さん、ありがとうございました!

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